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スギ花粉症ワクチン開発に向け、理研と鳥居薬品が共同研究に着手
−理研の研究成果を鳥居薬品と共同研究により社会へ提供するための『バトンゾーン』を構築− |
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2010年3月25日
独立行政法人理化学研究所
鳥居薬品株式会社 |
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共同研究のポイント
・アナフィラキシーショックを回避しながら高い有効性を持つスギ花粉症ワクチンの開発
・スギ花粉症ワクチンの開発・治験・承認申請を最短にする基盤を構築 |
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独立行政法人理化学研究所(本所:埼玉県、理事長:野依良治、以下「理研」)と鳥居薬品株式会社(本社:東京都、社長:松尾紀彦、以下「鳥居薬品」)は、理研が開発した“安全性・有効性に優れた特性を有するスギ花粉症ワクチンモデル”を、国民病とも言われているスギ花粉症※1への有効な治療薬として開発するための共同研究に着手することとしました。
両者は基盤的研究を効果的に技術移転する「橋渡し(バトンゾーン※2)基盤」を構築するだけでなく、上市後に蓄積される情報をもとに、副作用などの薬剤評価までを視野に入れた共同研究を行う仕組みである新たな「バトンゾーン」を構築しました。
理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)では、花粉症などのアレルギー疾患やリウマチ・膠原病などの免疫疾患について、免疫システムとその制御メカニズムの解明に焦点を絞り基礎研究を推進してきました。その成果のひとつとして、理研で開発したスギ花粉症ワクチンは、2種類のスギ花粉主要抗原を遺伝子工学的手法で合成し、さらにポリエチレングリコールを結合することにより、ワクチン治療で問題となるアナフィラキシーショック※3を防ぎながら、極めて有効なアレルギー抑制効果(マウスなどの動物実験結果)を出すことに成功したものです。
今回、理研と鳥居薬品は、理研の研究成果や研究基盤と、鳥居薬品の長年にわたる本領域での経験を生かし、スギ花粉症ワクチンの研究、開発が最速に進み、早期に社会へ提供され、患者の皆様のQOL(Quality Of Life)向上に貢献できるよう最善の努力をして参りたいと考えております。 |
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理研 野依理事長のコメント |
医薬品の開発においては、基礎研究から上市に到るまで十数年という長い時間がかかります。創薬の実現にはさまざまな知識や技術の橋渡しが不可欠です。私たちは、理研がもつ基礎研究の成果を陸上リレー競技のバトンに喩え、それを次の走者である産業、医療機関、学界などに渡す「バトンゾーン」という仕組みを唱えてきました。バトンは止まって受け渡すものではありません。両者の並走ゾーンが必要です。今回、スギ花粉症ワクチンの開発にあたり、「理研・鳥居薬品連携研究室」を開設し、鳥居薬品と上市後も視野に入れた長期にわたる共同研究を進めることとなりました。スギ花粉症ワクチンを皆さんの手に届けるまで、作用機序、薬理作用、ヒトへの作用・安全性・有効性など解明すべき点が残されています。理研のもつ創薬に関係する多くの人材や研究基盤などを思う存分にご活用いただき、社会に貢献するという目標を一日でも、一年でもはやく達成したいと考えています。
理研と産業界とが、その役割を認識し、互いの「ちえ」と「ちから」を持ち寄り、そして全力で問題解決に取り組むことによって、社会に新しい価値を付け加える、そのためのバトンゾーンを共に進むことは、これからの日本にとってますます重要になってきています。今般、共に駆ける走者として共同研究を進めていただく鳥居薬品に心から感謝します。
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鳥居薬品 松尾社長のコメント |
鳥居薬品では、皮下注射による減感作療法で使用するスギ花粉症治療薬のアレルゲンエキスを販売しており、また、同薬を舌下投与する開発を行う準備も行っております。今回、理研と開発するワクチンは、アナフィラキシーショックの危険性を回避しながら高い有効性を持つものとして期待しております。今後は、当社の有する知見も生かしつつ、世界有数の研究基盤によって支えられた理研とともに併走させていただくことにより、一刻も早く、安全で高い有効性を持つスギ花粉症治療薬を社会に提供し、患者の皆様のQOL(Quality Of Life)向上に貢献できるよう努力してまいります。 |
<今回の共同研究の概要> |
(1) |
スギ花粉症ワクチン開発のために、理研と鳥居薬品の連携研究室を設置し、安全、最速、最善に社会へ提供できるよう、必要な双方の持つ資源を効果的効率的に投入する。 |
(2) |
理研は、スギ花粉症ワクチンの作用機序の解明、非臨床(ヒト以外の動物)での有効性の確認などに関する研究、ワクチンの開発に関する研究、上市後のヒトへの作用などに関する研究を行う。 |
(3) |
鳥居薬品は、スギ花粉症ワクチンの開発に関する研究を行うとともに、ワクチンの開発および製造販売承認の取得、ワクチンの製造、販売などの事業運営、並びに上市後の副作用などに関する研究を行う。 |
<補足説明> |
※1 国民病とも言われているスギ花粉症 |
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日本において花粉症を有する人の数は、正確なところは分かっていないが、全国的な調査としては、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2008年(1〜4月)の鼻アレルギーの全国疫学調査において、花粉症を有する者が29.8%であったとの報告がある(出典:環境省「花粉症環境保健マニュアル2009年2月改定版」)。 |
※2 バトンゾーン |
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理研が提唱する技術移転のモデルで、理研の研究者と企業の研究者・技術者という異なる経験を持つもの同士が緊密に連携し、一定期間、同じ方向に全力で走りながら、技術移転・知の融合を行う仕組みのこと。従来の短期技術移転(リニアモデル)では困難であった「暗黙知」「ノウハウ」といった重要な部分も、交流し併走することにより効果的に移転する考え方(パラレルモデル)。 |
※3 アナフィラキシーショック |
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同一アレルゲンが2回目に体内に侵入した時には,1回目よりも急速で強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こり、ときに呼吸困難、めまい、意識障害などの症状を伴い、さらに血圧低下などによりショック症状を引き起こし、生命が危険な状態となることがある。これをアナフィラキシーショックと呼ぶ。 |
【報道担当・問い合わせ先】
(問い合わせ先)
独立行政法人理化学研究所 横浜研究推進部
TEL.045-503-9117 FAX.045-503-9113
(報道担当)
独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
TEL.048-467-9272 FAX.048-462-4715
鳥居薬品株式会社
経営企画部 広報担当 TEL.03-3231-6814 |
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