Tenofovir alafenamide(TAF)を含む新規抗HIV薬2品の日本国内における販売権に関する契約締結について
2015年3月2日
日本たばこ産業株式会社
鳥居薬品株式会社
日本たばこ産業株式会社(以下「JT」)及び鳥居薬品株式会社(以下「鳥居薬品」)は、ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)が創製し、JTが日本国内での独占的開発・商業化権を保有する核酸系逆転写酵素阻害剤tenofovir alafenamide(以下「TAF」)を含む新規抗HIV薬2品について、JTが製造販売承認を取得した後、鳥居薬品が日本国内において独占的に販売する契約を本日締結しました。
TAFは、HIVの逆転写酵素阻害作用を示すテノホビルの新規プロドラッグです。テノホビルのプロドラッグとしては、これまでにも「ビリアード®錠」、「ツルバダ®配合錠」及び「スタリビルド®配合錠」の有効成分として含まれるテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(以下「TDF」)がありますが、TAFはTDFの10分の1以下の投与量で高い抗ウイルス効果を示します。また、TDFの安全性上の懸念である腎臓や骨への影響が軽減されることが期待されます。
今回締結した販売契約の対象となるTAFを含む新規抗HIV薬2品のうち、「エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/TAF配合錠」(以下「E/C/F/TAF」)については、現在JTが国内における製造販売承認申請を準備中です。E/C/F/TAFは、鳥居薬品が2013年より販売している抗HIV薬「スタリビルド®配合錠」の4つの有効成分のうち、TDF 300mgをTAF 10mgに置き換えた配合錠で、1日1回1錠の服薬で治療を行う抗HIV薬です。ギリアド社による第Ⅲ相臨床試験において、E/C/F/TAFは対照薬であるStribild®(日本での販売名「スタリビルド®配合錠」)と同等の高い有効性と忍容性が確認されています。また、腎臓と骨に関連する検査値については、Stribild®と比較して有意に優れていることが確認されています。ギリアド社は本剤について、米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品庁(EMA)に新薬承認申請を行っています。
また、「ツルバダ®配合錠」の2つの有効成分のうちTDFをTAFに置き換えた「エムトリシタビン/ TAF配合錠」(以下「F/TAF」)については、現在ギリアド社が第Ⅲ相臨床試験を実施しており、2015年第2四半期に米国及び欧州での申請を予定しています。日本国内においては、ギリアド社が海外で承認を取得した後、JTが製造販売承認申請を実施する予定です。
現在、JTグループでは、抗HIV薬として「スタリビルド®配合錠」、「ツルバダ®配合錠」、「エムトリバ®カプセル200mg」、「ビリアード®錠300mg」、「ビラセプト®錠250mg」を鳥居薬品が販売しており、これらに加え、E/C/F/TAF及びF/TAFが承認され、販売することになれば、HIV感染症領域における医療へのより一層の貢献ができるものと考えています。
E/C/F/TAFの海外での新薬承認申請状況について
ギリアド社はE/C/F/TAFについて、米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品庁(EMA)に新薬承認申請を行っており、米国では処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく審査終了の目標期限が2015年11月5日とされています。米国での新薬承認申請では、治療未経験者を対象とし、Stribild®を対照薬とした2つの第Ⅲ相臨床試験(Study 104とStudy 111)の48週時点での評価が含まれています。その他の第Ⅲ相臨床試験ではウイルス学的抑制が得られているHIV-1感染症患者を対象としてE/C/F/TAFへ切り替えした際の有効性および安全性を検討した試験および腎機能低下のHIV-1感染症患者を対象とした試験が実施され、新薬承認申請資料に含まれています。
なお、ギリアド社が公表した第Ⅲ相試験の詳細データは別添参考資料をご参照ください。
以 上
参考情報
以下に、ギリアド社が米国時間2015年2月26日に公表したプレスリリースの日本語抄訳を添付します。ギリアド社が公表したプレスリリースの正式言語は英語であり、内容及びその解釈については、原文が優先します。詳細は、ギリアド社のウェブサイトをご参照ください。
ギリアド社プレスリリース日本語抄訳
ギリアド社は米国時間2015年2月26日に、抗HIV薬による治療経験がないHIV感染症患者を対象としたE/C/F/TAFの第Ⅲ相臨床試験(Study 104とStudy 111、対照薬は両試験ともStribild)の詳細結果について、米国ワシントン州シアトルで開催されたthe 22nd Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections(CROI)において公表しました。
Study 104とStudy 111を併合した1,733例について有効性の解析を行ったところ、48週時点におけるウイルス学的成功率(HIV RNA量が50コピー/mL未満の被験者の割合)はE/C/F/TAFが92.4%(866例中800例)、Stribildが90.4%(867例中784例)で非劣性が示されました(95%信頼区間:-0.7~4.7%、p=0.13)。また、年齢、性別、人種、試験開始時のHIV-1 RNA量やCD4数による層別解析においても、E/C/F/TAFとStribildは同様のウイルス学的成功率でした。有害事象による中止率はE/C/F/TAFで0.9%(8例)、Stribildで1.5%(13例)と低く、多く報告された副作用は下痢、悪心、頭痛、上気道感染でした。
さらに、当該試験における腎機能や骨、血中脂質の臨床検査値への影響について詳細な解析結果が公表されました。腎機能への影響については、いくつかの検査が実施され、投与開始時から48週時までの推定糸球体濾過量(eGFR)の低下量(中央値)は、E/C/F/TAFでStribildと比べ、有意に小さい結果でした(E/C/F/TAF:-6.6mL/min、Stribild:-11.2mL/min(p<0.001))。尿細管性タンパク尿の評価ではE/C/F/TAFがStribildと比較して、有意に優れている結果でした。また、骨への影響については、骨密度(BMD)減少がE/C/F/TAFでStribildと比べ、有意に小さい結果でした(大腿骨頸部の骨密度変化(平均変化率(%));E/C/F/TAF:-1.30、Stribild: -2.86 (p<0.001)、腰椎の骨密度変化;E/C/F/TAF: -0.66、Stribild -2.95 (p<0.001))。一方、E/C/F/TAFの血中脂質値は、Stribildに比べて高い値となりましたが、TDFを含まない治療薬を投与した際の血中脂質値の変化量と同様の変化でした。
その他に、抗HIV薬により血中ウイルス量が抑制されており、軽度から中等度の腎機能低下例(クレアチニンクリアランス≧30mL/min)のHIV感染患者(242例)を対象とした、E/C/F/TAFへの切り替え後の有効性と安全性の試験(Study 112)結果について同学会にて公表されました。切り替え後48週時点で、被験者の92%でウイルス抑制が維持されていました。eGFRには有意な変化がなく、近位尿細管機能を評価する検査値は改善し、尿中タンパクや尿中アルブミンの減少が確認されました。さらにBMDの増加が確認されました(大腿骨頸部:0.9%、腰椎:1.9%)。一方、空腹時の血中脂質値については、TDFを含まない前治療薬からE/C/F/TAFへ切り替えた患者では減少し、TDFを含む前治療薬から切り替えた患者では上昇しました。
その他に、青少年を対象としたE/C/F/TAFの第Ⅲ相臨床試験(Study 106)における24週時の成績も報告されました。さらに、本学会の関連学会であるthe International HIV Drug Resistance Workshop(2月21~22日開催)において、抗HIV薬による治療経験がない成人患者及び青少年患者を対象とした2試験でのE/C/F/TAFの治療における薬剤耐性の報告も公表されました。
お問い合わせ先
日本たばこ産業株式会社
IR広報部 TEL.03-3582-3111(代表)
鳥居薬品株式会社
経営企画部 広報担当 TEL.03-3231-6814